長年にわたり広告制作の仕事に携わっていますが、時と場合によっては営業的な対応を迫られることがあります。いわゆる「にわか営業」とでもいったらいいのか、お客様に対しては、やはり制作も営業も関係なく、オール営業で対応することが大切な時代になっています。そんな中、ある情報誌の制作でお客様と一緒に泊まりがけで取材へ行ったことがあります。夜はもちろん一緒に食事をして、仕事の話や会社の話をして、あたりさわりなく過ごしました。
ところが一軒目のお店を出て、ホテルへ戻ろうとしたときのことです。お客様が突然「スナックにでも行きましょう」といい出しました。「えっ、そういわれても」と思いましたが、結局、女性がたくさんいるようなお店へ行って飲むことになりました。お客さんと一緒なので、本来であればお客様のことを立てなければならないのですが、自分自身、お酒もカラオケも大好きなので、ついブレーキが外れてしまいました。それこそお客様のことは無視して、飲めや歌えやの大騒ぎ。かわいい女の子がついてくれたこともあり、接待ということはすっかり忘れ、無礼講で飲みまくってしまいました。お客様のことを「ちゃん」付けで呼んだのは大失態でした。会社の看板を背負って対応しているはずなのに、あれは本当に失敗だったと思います。
ふと気がつくと、お客様は完全に居場所を失い、早くホテルに戻りたいという顔をしていたことはいうまでもありません。営業的な発想はすべて忘れ、一個人として飲み会を謳歌してしまった自分。それから数か月後。その飲み会が原因だったかどうかはわかりませんが、自分が担当していた情報誌の仕事は他社に奪われてしまいました。お客様に不愉快な想いをさせてしまったこと、おそらくはそれが原因なのかもしれないと思っています。今になって思えば、「にわか営業」といえども、会社の顔として営業に徹するべきでした。営業としての最低限のマナーが、自分には欠けていました。